クック諸島には何がある?~クック諸島政府観光局パンフレット寄稿

クックからさらにプロペラ機で一時間、アイツタキ島から出るツアーに参加すると、ポリネシア随一の美しいブルーラグーンで泳ぐことが出来る。船からはウミガメやイルカの姿も

健康飲料として知られている、あの臭~いノニの実を木からもぎとり、
手でぐにゃりとつぶして頭皮にこすりつける。
「発毛にもいいのさ」とガッハッハと笑うのは
クック諸島の主島、ラロトンガ島でネイチャーツアーを行うパさん。

確かにパさんの髪はふさふさ。
さらには、山を歩くから蚊よけにどうぞ、と
何やらべったりとした臭い匂いの液体を肌に塗れと渡す。
眺めていると塗る人塗らない人それぞれ…
そんなパンチのある序奏で始まるパさんのネイチャーツアーは
イキイキとした南太平洋の植物のパワーを感じさせる山歩きのツアーだ。
ときには彼はターザンのような格好で現れるものだから、
キワモノのように思う人もいるそうだが、
実は、彼は島民に一目おかれている植物療法師である。
まあ、そんなところからクック諸島の旅を始めると、
この島が単なる南国のリゾートではないことがわかるだろう。
昨今流行りのパワースポットもあるのだが、
「そこがそうと定められてなくてもわかるもの」というパさんの言葉が腑に落ちる。
そんな場所がクック諸島なのだ。

新鮮な生魚とココナッツミルクを和えたイカマタは、意外に日本人好みの味。タロイモなど島の野菜は基本的にオーガニック。地産地消のスローフードがクック諸島での食事

あるとき、「クック諸島に行く」というと、
友人たちからは「そこはどこにあるの」「なんでまたそこへ」と
興味津々といったふうの質問がきた。

「どこにあるの」と聞かれるくらいだから、
ハネムナーの聖地タヒチとフィジーの間に挟まれ、
地味な印象がある島々なのだろう。
確かに、ゆっくりと流れる時間は南の島の典型的なそれで、
外資に大々的に開発されていないからこそ、
その名が日本へはあまり届いていないのかもしれない。
そうなると、リゾートの繁華街にありがちな客引きもいなくて
商売っ気も感じられず、しかも治安がいい。
そう、有名な観光地にはない利点を挙げればきりがない。
さらには一歩、扉を開けば、パさんのような
ポリネシアに太古から伝わる叡智を伝える人にも出会える。

カラフルなアイランドドレスにリトハットと呼ばれる手編みの麦わら帽をかぶった女性たちが集まる日曜教会。月に一度は全員白のアイランドドレスの日があり、それも壮観

日曜教会に行くと、住民の98%がキリスト教という
敬虔な信仰の姿が見られ、歴史に翻弄されたであろう島の姿も感じられるだろう。
「イメネツキ」というマオリ語のゴスペルを老いも若きも
いっしょくたにリズムを刻みながら歌っている姿には、
その場にいるだけで胸の奥から熱いものがこみあげて、
何かにあたってしまったようにクラクラしまった。
後世に伝えていこうとする民族の誇りが、
形となって「日常に」あることへのカルチャーショックだったのかもしれない。

なんとイルカをお供にタヒチまで泳いだという伝説を持つ植物療法師パさんと奥さまのジュリアンさん。そして右端はラロトンガ在住の平田奈々さん

ちなみにリアルといえば、ここで忘れてはならないのが
現地で観光業に携わっている平田奈々さんの存在。

彼女は島民に大人気のズンバエクササイズの先生で、
私が道を歩いていると「ナナの友達か?」とよく話しかけられた。
それだけ彼女は島民のアイドル的存在なのだ。
日曜教会並みに集まった集団ズンバダンスも必見ながら、
舞台上で颯爽と踊る彼女の姿はなんとも頼もしく、
同じ日本人女性として誇らしげに思ってしまった。
もし、かの地に行く計画があるのなら、
ぜひスニーカー持参で彼女のズンバクラスへ!

そこにもまた、クック諸島の現在進行形の日常の姿があるから―。

クック諸島には旅好きのオーストラリア&ニュージーランド人がよく訪れるので、バックパッカーから高級志向の旅人まで満足できる居心地がいいアコモデーションが多い

※上記、許可を得て、転載させていただいています。