旅からの、波紋。

昨日の朝食は、オニオングラタンスープだった。

ポルトガルのマルヴァオンという「鷹の巣村」といわれる場所で買った陶器に
淡路島の玉ねぎで作ったオニオンスープを入れ、
これまた、淡路島の南海荘のシェフ竹中さんが作った、
自家製天然酵母と淡路産自然栽培の小麦を使ったバケットをひたし、
チーズを乗せてオーブンで焼いてみた。

コーヒーは奈良の信貴山にある「てぬき庵」で買った
フェアトレードのオーガニックコーヒーで、
コーヒーカップは淡路島、樂久登窯のもの。

あるとき、私の家のテーブルに並んだものを見て、
「まるで万国博覧会のようだね」と、友人が言ったことがある。
確かに、いろんな場所からのものがあるからそれはそうとも言える。

各地で買い求めた食器で食材を料理して
おのおののエピソードを話しながら家族や友人に出すのが好きで
プライベートな旅や取材旅から戻っては人を呼んで家で飲み会を開く。

そのときには、写真は見せないのがお約束。
ちょっとした説明と食べものを持ってきた背景を話すことで
私が行ってきた場所です、と完結させずに
相手に「行きたいな」と思ってもらう。
いやらしいなと思うけど、
やっぱり旅立って現地で「何かに出会う」体験を
楽しんでもらいたいのだ。

先日は、久しぶりの海外旅行に出かけていた姉を招いて
訪問先だった南仏を思い起こさせるような
南仏料理の「ラタトゥイユ」を用意した。

旅行から戻ってきたばかりの姉は
なんだか上機嫌で、元気がいい。
ふだんは飲まないワインやシャンパンを飲みたいといい、
ちょっとふっくらしたようにも見えるが
そんなことはお構いなしに食卓に乗った
ラタトゥイユやサラダ・ニースワース、ベーコンなどをぱくぱくと食べる。
夢見心地な目をしながら、プロヴァンスで出会った人たちの暮らしや
人生において大切なことは何かなどと話し始めた。

そんなことは十数年前から妹が真剣に考え、
語ったり、書いたりしているというのに彼女には
まったく影響を及ぼしていなかったようである(苦笑)。

ネットや紙の上で見たり聞いたりするものと
現実の行動では、「旅」においては各人に与える影響は格段に違う。
それは、情報を発信する人ならよく理解していることだと思う。

旅の文章などをつらつらと書き綴る仕事をしていると
それを経験したことのない誰かの目に留まって、
ちょっとしたひっかかりを持ってもらうこと、もしくは
あと一歩、背中を押すのに役だっていたらいいなと願う。
私自身もそうやって新しい物の見方を知ったり、
見知らぬ場所に興味を持ったりしているのだから。

エゴイスティックだなと思いつつ、
私もどこかに誘われたいのである。

まあ、そんなわけで、南仏のおみやげとトレードするかのように
最近私が行ってきた淡路島のお土産を袋いっぱいに抱え、
ウキウキと足取りも軽く都内へ帰っていった姉。

それを見て、旅の力は底しれないな~と改めて感じた次第でありました。