エコツーカフェ 富山湾を囲んで、あっちとこっち 発酵食編。

さる7月23日(土)、日本エコツーリズム協会ご協力のもと、
エコツーカフェ「富山湾を囲んであっちとこっち 発酵食編」を富山県南砺市で開催しました。

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南砺市の井波は井波彫刻で知られる町。町を歩くと職人さんたちが作業している様子がみられます。このサイズの欄間は、熟練の職人さんで1ヶ月かかるとか。ノミは手作り。

このイベントは、2015年10月に表参道の「OnJapanCafe」で開催したエコツーカフェ「富山湾を囲んで、あっちとこっち」の第二弾で、富山のエコツアー会社「エコロの森」代表の森田由樹子さんの働きかけによって富山開催がかなったものです。

前回は富山湾をぐるっと囲む立山と能登半島の地形的な見地から、能登「ぶなの森」ガイドの今井淳美さんとおふたりにエコツアーの魅力をお話ししていただきました。

今回は南砺市の瑞泉寺と井波西別院で開催されている「太子伝会(たいしでんえ)」のお斎(とき)料理、サバずしを食べ比べするツアーを森田さんが主催されていることから、富山と能登、ふたつの場所の共通点となる「発酵食」についてお話しいただくことに。

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お斎料理のお弁当。左は瑞泉寺、右は井波西別院のもの。瑞泉寺のほうは赤い福神漬けで井波西別院のものはこんぶが入っています。サバずしはなれずしといって塩漬けしたサバと米麹や唐辛子などを樽にいれ、2ヶ月ほど発酵させたもの。左はアンチョビ風味で誰でも食べやすそう。右は山椒たっぷり。私は右のものが好み。お土産でサバずしだけも買えたので、早速お土産に買いました。

前回に引き続き、私はコーディネーター(全体構成や進行)を務めさせていただきました。あちこち取材をしたり旅をしたりしていることで、こんな風に人と人を文化でつなぐことができるのは嬉しいことです。

この企画も、森田さんがガイドをする立山ツアーへの参加の際、能登の今井さんをお誘いしたことから始まりました。「能登から立山が見えますよ」という今井さんのひとことに森田さんが「立山からも能登が見えますよ!」と反応したところで、なるほど、これは面白い!と。

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試食を食べながら説明を聞く参加者のみなさん。梅雨明け翌日、いきなりの酷暑のなかご来場いただきありがとうございました!

まず、最初に私のほうから場をあたためるべく、これまでにめぐった場所で出会った発酵食の話をスライドショーで。
国内は、能登と発酵食文化が少し似ている秋田県の魚醤「しょっつる」や「日本酒」の話をメインにさせていただきました。
海外は、これまた最近参加した能登のキリコ祭り、宇出津あばれ祭りの[呼ばれ]という風習が、クロアチアのコナブレ地方で体験したクリスマス・コレンダととても似ていたのでその話を。
(動画の歌の下手さはご愛嬌ということで……)

各家庭を訪ねて出されるごちそうは、能登はひねずしに対し、コナブレは自家製のサラミやチーズ、ハムなど発酵食品のオンパレード。今回は、富山での開催だったので、参加してくださる富山の人にとっては能登や別場所からの「発酵食」という話もいいのかなあと。そういう私は地元富山出身なのですが、今回のお斎料理のサバずしについては昨年まで知らなかったのでありました。

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富山からは、氷見の柿太さんのこんかぶりやサバずし、味噌、なれ粕、能登からはこんかいわし、ふぐの子糠漬け、ひねずし、いしりなどさまざまな発酵食が試食に出ました。私も琵琶湖の魚治さんの鮒ずしを持参。そのほか、写真のfood meet design OCATTEの中川裕子さんの発酵食プレートも!

今井さんからは、能登の発酵食、いしりやひねずしの話を写真とともに紹介していただきました。ひねずしとは、能登の祭りの際に各家庭で出されるなれずしのこと。井波のサバずしと同様で、3ヶ月ほど発酵させたもので、麹は使わずお米とアジと唐辛子と山椒だけ。漬け込みの時期に取材をしたくてたまらないのですが、いつアジが港に大量に水揚げされるかわからず、関東からはなかなかすぐに行けないので取材のハードルはとても高いです。両方とも、山椒の葉が出てきたら漬け込むというのは同じですね。

そこは元新聞記者の森田さん、地の利を生かし、今回の太子伝会のサバずしができるまでを取材。その様子をスライドショーで見せてくれました。富山にはバタバタ茶というめずらしい後発酵茶やかぶらずし(加賀の食文化ですが)もあり、紹介する内容は尽きません。最後は、近くの砺波市に昨秋オープンした発酵ごはんのおみせ「ichica kitchen」や能登の発酵食を食べられる民宿の話などをして終了いたしました。

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左から「ぶなの森」今井淳美さん、「エコロの森」森田由樹子さん、私。梅雨明けしたばかりの北陸はとても暑かったのですが、あずまだちの家のなかはそこまで暑くなく、扇風機で涼をとることができました。

いらした方の中には地元がこんなに発酵食のある場所とは思っていなかったという人もいて、故郷の食文化を見つめ直すことができたとしたら幸い。森田さんも今井さんも、風土に育まれた土地の歴史や文化を体感する旅へいざなうことをお仕事にされています。

ぜひ、地元の方も機会を作っておふたりのガイドツアーに参加してみてください。土地の魅力をいろんな角度から発見する楽しみが増えるでしょう。毎日の景色を眺める目が変わりそうですよ。そういう私自身が、ふたりに出会ったことで里帰りががぜん楽しくなったのですが。

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お斎料理をいただいた西別院のなかは風通しがよく、あちこちでお年寄りが車座になっておしゃべりしていたり、寝っ転がっていたり。お寺が公民館のような役割を果たしている模様でした。

また3人で、いろんな角度から北陸を眺めることができたら面白いだろうなあ。そういう意味では、今回私がスライドでご紹介した秋田県や新潟県、和歌山県、丹後半島なども共通するところがあるので、小さな集いを催しながら、楽しい旅の提案ができましたら幸いです。森田さん、今井さん、またぜひどこかで、エコツーカフェを開催しましょう〜〜。

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太子伝会の太子とは、聖徳太子のこと。瑞泉寺では太子の一生を語る絵解きや、聖徳太子二歳像のご開扉などが行われていました。私には、神々しい聖徳太子の御姿に、「以和為貴(和を以て貴しとなす)」の言葉が思い出されたのでありました。しみじみ。