雪にまみれてかんじきダンス。

この冬初めて大地の芸術祭に参加

長いニュージーランドの輪行旅から戻って新潟へ行った。
真夏の南半球でこんがりと焼けた肌にぴりりと突き刺さる精錬な空気。
ああ、雪国の冬ってこんなだったなあとふるさと富山を思い出す。

越後妻有の大地の芸術祭は以前某情報誌でアート担当として働いていたときから
ずっと興味が会ったものの訪れるタイミングを逃し、気づいたら10年近く経っていた。
のどかな田園風景で行われるアートの祭典は3年に一度。
昨夏行けなかった後悔があったものの、次回は行くだろうと思っていたのだけど
地元の方のお誘いにより、やっと行ける機会に恵まれた。

実は数年前に友人たちとタレルの「光の館ーHouse of Light」に宿泊したことがある。
そのときはなかなか予約がとれず、夏に予約して雪のなかでの宿泊だったのだが
谷崎潤一郎「陰翳礼讃」からインスパイアを受けたという
太陽の光と越後妻有の里山の風情が融合した芸術を
宿泊しながら体感できる施設に感激したのを覚えている。
特に風呂は朝方、湯船に差し込んでくる自然光が美しく
幻想的な世界のなかで過ごした。

今回のメインはコンドルズ近藤良平氏による振付の「かんじきダンス」への参加。

雪が降り始めたため、完全防備!もちろんかんじきも履いてます。
老いも若きもかんじきダンス!

ふだんダンスなんて踊る機会もない私は頭をからっぽにして踊り狂う。
みんなが踊っているから自分がオバカになっていても気にならない。
とても楽しそうに見えたのか
同行した相方ともども地元のテレビ局にインタビューされてしまった。
確かに、私もインタビュアーだったら、しゃかりきに踊っていた人にマイクを向けるだろう。

地域ツーリズムを取材して回ってからしばらく経つが
こういった東京で活躍するアーティストが地域の中に入って
一緒になって何かに取り組むのは地元の人達の刺激になるだろう。
地道な地元の活動のなかにカンフル剤を打ち込むアーティストや
他地域からのボランティア、リピーター客の存在は
そのときだけのお付き合いでなく
長く続くことでお互いに地域の未来を作っていこうという意識が感じられる。

越後妻有は比較的東京に近いということもあるのだろうが、
アートを地域活性に取り入れたことで
当時、風前の灯火だった農村地域が息を吹き返し
元気になっていったいい例だろう。

冬だけでなく、春も夏も秋も見たい。そう思わせる魅力がある。
この取り組みがサステナブルに続くことを祈る。

イベント会場では地域のお母さんがたが点てる抹茶と郷土の味、しょうにいもが楽しめた
お父さんたちがついたお餅はお母さんたちがきな粉をまぶしたり、お汁粉にしたり。
廃校をまるごとアートにした「最後の教室」も見に行く
宿泊は廃校をおしゃれにリノベーションした三省ハウス。海外のバックパッカーズを思い出す
朝ごはんはもちろん地産地消。妻有米、水分たっぷりで甘く、美味しかった。納豆に野沢菜を混ぜるアイデアは使えそう

里山には昔ながらの懐かしい風習や食文化、
時代を反映した新しいカルチャーが共存して息づいている。

里山の子どもたちは、雪のなかでも元気にはしゃぎまわる

新潟のあとに長靴のまま六本木ヒルズでの
環境カオリスタ検定創設記念フォーラムに行ったが
ビルの谷間に子どもたちが元気にはしゃぎまわる姿はない。
基調講演を行ったCWニコル氏が
「生物多様性の大切さが叫ばれるなか、日本の森の絶滅危惧種は子どもたちだ」と
言われていたが、確かに、里山には子どもがいたが昔に比べて随分減っただろう。
首都圏に移り住んだ私自身も里山の子どもだったのだから。
都会の子どもたちは、冬はいったいどこで駆けまわるのだろう?