スイカにまつわるエトセトラ

このところ、朝食にスイカを食べている。起きがけのぼんやりした頭をシャッキリとさせるひんやりシャリシャリとした食感。身体に染み入るかのような甘い果汁。ひと口食べると朝から幸せな気分に満たされる。朝一番のタイミングで果物を食べるのが健康に良いのかどうかはわからない。そんなことを気にしてしまうと食べものは糖質抜きのタンパク質と野菜ばかりになってしまう。最近、私のニュースフィードは健康情報のおすすめ記事が多すぎる。

写真は八色スイカ。堂々とした立派な面構えは新潟・湯沢からの毎夏の贈り物。まんまる中身ははち切れそうに中身が詰まっていて、包丁を入れるとパカッと開く。断面を見ると惚れ惚れ、なんとまあ、きめ細やかな繊維なんだろう。

実は、数年前までスイカは苦手だった。水っぽくて種がいっぱいで、外れをひくとスカスカで、自家製だとポコポコ身をつけるくせに市場に出回ると、高値。スイカを買うくらいならアイスのスイカバーを食べたほうがいいや、とさえ思っていた。なんたって切るのが面倒だ。 OL時代、オフィスに送られてきた地域ご自慢の巨大スイカをしょっちゅう切らされ、挙句、切り方に文句を言われたのもトラウマになっている。食べたのは既婚者のおじさんたちだったので、奥さんの切り方が自分の基準、常識なのだった。

まあ、そんな暗黒記憶はいつぞやかの大きな台風と共にユーラシア大陸、または太平洋の彼方に飛ばしてやったのだれど、スイカには罪はなく、そのおいしさに気づいたのは、スイカの産地、三浦に野菜を買いに行くようになってから。軒先に並んでいた姫甘泉が安かったので、気まぐれに買ってみたのだ。いざ、まな板の上に乗せると小ぶりで切りやすく、思いのほかおいしい。それ以来、夏の間はスイカが食べたくてしょうがない。
タイのデパートのフードコートで飲むスイカジュースもおいしかったな。「テンモーパンナムケンドゥアイ、マイウワン(氷を入れてクラッシュしたスイカジュース、甘くしないで)」という小学生みたいなオーダーの仕方を毎度呪文のようにカウンターで唱えたけど、さすがに屋台では氷が心配で、スイカジュースを頼む勇気は出なかった。氷無しだと生ぬるくておいしくない。こう書いていると冷えたスイカを食べたくなってきた。この夏はいつまで食べられるかな。