4月、満月の日の夕暮れ

力強い、空だった。今夜は満月らしい。


昨年からいろんな方に拙作『かたゆき』を読んでいただいた。
新人だから早く過去作を離れ、別のものを書かなくてはいけない。
もがき、昨年はプロットの仕事をやりながら一作。
太平洋戦争時代のものだったから、時間がかかった。
平和を、と言う前に戦争のことをちゃんと自分の中に落とし込みたかったのもあった。

先日、かたゆきを読んでくださった監督から連絡がきて、
大切なところを逃げないで、ちゃんと芝居を書きなさいとご指摘いただいた。
でも、余計なところは削ぎ落とさなくてはいけない。
どんどん削って再構築していくと強い物語が、自分の中に見えてくるはずだよ、と。

私のなかに入ったものは腐敗せず、発酵したものなら、ずっと伝えられる、という気持ちがやっと芽生えた。それは人間の感情の物語。
理性や賢さという言葉の反対にあるもの。いま、体内であれこれが次々と発酵し始めている。
歳を重ねるとは、こういうことなのか。
人間に生まれて良かった。