10月下旬、ふと頭に浮かんだキーワードに従って、埼玉県春日部市に5日間ほど滞在してみた。来年から始まる連載小説の内容を考えていたときに、ポッとそのキーワードが頭に浮かんだのだ。
旅の取材ではこれまで行ったことのないエリアだった。
なので、一箇所に滞在して街の様子を眺めてみることにした。
駅のまわりは開発目覚ましいところ、それを避けているところ、いろいろ。個性豊か。
ほぼ起伏のない地形は、空が広く感じる。
レンタルの電動自転車が走りやすかった。
『イザベラ・バードの日本紀行』を読み返したら、粕壁宿周囲の地形については同様の印象をバードも抱いたようだ。
柿の木にはオレンジ色の実がたわわに実る。そうか、ここは熊出没の危険がないから実を落としていないのか。
駅から少し離れると、パン屋さんが点在する。パン好きの私は、パンのオリエンテーリングをするようにめぐる。住宅地に人気を感じたら、だいたいオサレパン屋である。
目的をふわっとさせたいときは、パン屋、神社をチェックポイントにすれば間違いない。
そうそう、初めて東武動物公園に行ったけど、よいところ!
ホワイトタイガーのカーラを激写する人に出会い、話し込む。
いわゆる”推し”なんだと私と近い年齢の彼女は言った。
なぜ推しになったかと聞いてみたら「顔がいいでしょ?」と返ってきた。
確かに鼻筋の通ったりりしいお顔立ち。
推しとは、理屈では説明できない本能に訴えかけてくる存在なのかと気づきけり。
ここでは、街のことを教えてくださいと頼むと、いろんな人が資料を貸してくれ、場所を案内してくれた。こちらは土地の感じを知りたかっただけだったのに、出会ったみなさんはとても優しく、時間をとってくれた。
聞いてくれる人がいるとこちらも調べるからいいのよ、と感謝をされてしまい、恐縮しっぱなし。平日昼間から自転車でウロウロできる緩さがある場所の包容力に感謝。
途中、人気の新興住宅地にも行ってみた。駅の周囲はモールやマンションで便利さ、治安の良さが子育て世代に人気である。
数駅移動しただけで住環境が全く異なるところに、住む場所は人生の方向性を決める、明確な意思表示なんだなと感じたりした。
宮代町を歩いていて、象設計集団の建物にたどりつく。象の建物には、各地で偶然に出会う。近づくと、明らかに場の空気が変わるから、気づく。彼らの建てた建物の周囲には、物言わぬ意思と文化が存在しているからかもしれない。
敷地内に落ちていたかりん。
たくさん持ち帰ってといわれたけど、まだ数日いる予定だったのでひとつだけ。ほのかに甘酸っぱいアロマと手触りを楽しんだ。
春日部市、宮代町の皆さん、お世話になりありがとうございました❗️
来年から、温かな物語をお届けします。