【あきた白神〜時間に逆らい3日目から遡上する世界遺産の旅 2日目の備忘録】

あきた白神旅の2日目を振り返る。

ふだんから地図を眺めるのが好きな私は、以前から二ツ井町の、七座山の7つの山々の合間を蛇行する米代川に興味を抱いていた。
この辺りは飛行機の上空から見える地形が大変面白い。


七座山が八郎太郎伝説の舞台でもあることを知ったとき、昔から変わらぬ地形と言い伝えがしっかりシンクロしていることになるほどなあと膝を打った。

能代市のホームページによると、龍が川の水を飲みにきているような形は「蛇形(だけい)」と呼ばれ、風水的には吉形でパワースポットだともいう。そう知ると、ここに来れたことになんだかありがたい気持ちになる。

北前船の時代には、この地形を生かし、山で伐採した天然秋田杉を荷揚げして川に流しして運んだ歴史もある。

原産地の今の姿を感じつつ、日本海に注ぐ米代川をつたい、商人の町、能代へ向かった。

日本三大美林秋田杉の木材集積地だったため、能代はかつて東洋一の木都とされていた。

天然秋田杉を扱う匠の知恵と贅が結集し、全国各地の商人たちをもてなしたのが、1937年に料亭として建てられたのが、旧料亭金勇だ。


築90年近い建物が変わらず綺麗に保全されている以上に、ときどき「だびょん」(〜だろうという推定の意味)を語尾につけるガイドの柴田テツ子さんの能代弁が耳に心地よい。

住民のアイデンティにつながる歴史を、見たものから掘り下げて語り伝えることのできるテツ子さんをはじめとしたボランティアガイドの皆さんは最後の金勇の匠の一人といえるだびょん。

お昼前には能代から、北上して八峰町の留山に向かった。

途中、白神こだま酵母を使った「ボスケット」のパンをランチ用に購入。
縄文時代からの微生物の宝庫、白神山地で生存競争を勝ち抜いてきた天然酵母ながらも、仕上がるパンはほのかに甘くやさしい。
私たちは焼きたての香ばしいにおいに耐えられず、買ったそばから車内で食べ始めてしまった。

私たちが目指す留山は、世界自然遺産区域ではないが白神山地を成す一部。

山に入る前、白瀑神社に参拝した。
背後にある滝、白瀑は地域の人たちの信仰の対象でもある。背後に白神山地を背負っている滝からくる清らかな水が人の暮らしを支えている。


私たちは地域の人たちが藩政時代より守ってきたブナ林、留山に入る。

遊歩道には水源となる大切な森林の根を守るためにボードウォークが整備され、歩けるようになっていた。そろそろ紅葉も始まらんとばかりに落葉するふかふかの土の上には新しいブナの命や生存競争を勝ち抜いてきた白神こだま酵母も棲んでいる。

複雑なものが幾重に重なりわかりにくいものの中にこそ大切なものが光る。それを見つけて役立てているのは人間をはじめとした動植物だ。

それらを発見した喜びと驚きはいかほどだったろう!

現在、ミズナラのナラ枯れが深刻だという。全滅したらどんなふうに生態系が変化するのだろうか。

夕暮れ前に、八峰白神ジオパークを車で巡る。
八森地域を流れる真瀬川のサケの遡上を間近で見た。海水と淡水が混ざり合う河口付近の汽水域で体を慣らすサケの肌は剥げてボロボロ。それでも命を繋ぐために必死に遡上する。

椿海岸に到着し、500万年前に海底火山の溶岩流が固まってできた岩岩の柱状摂理を無邪気に歩いた。冷静に考えると地球の、生き物としての気迫の現れと思うとちょっと怖い。
その時代に生きていなくてよかったと思った次第。

白神コミュニケーションズ後藤千春さん撮影。

八峰町の海岸沿いはそんな地球の剥き出しの姿が残っていて、途中で車を止めてみる楽しみがある。宿へ向かう道すがら、雲の合間に太陽が落ちてきた。
慌てて夕陽のスポットへ行き、写真を撮影する私たち。“映える”写真はしっかり撮れたと思う!

続く。