【あきた白神~時間に逆らい3日目から遡上する世界遺産の旅 初日の備忘録】

羽田空港から4000年前に飛ぶ初日。

今回の旅先である秋田の玄関口・大館能代空港は、世界文化遺産「北海道・北東北縄文遺跡群」の一つ、伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡のすぐそばにある。

伊勢堂岱遺跡が、1992年に大館能代空港へのアクセス道路建設工事の発掘調査で発見された縄文遺跡であるという経緯を考えると、大館能代空港のあたりにも環状列石が残っていたかもしれないし、全くなかったかもしれない。

SF的には、空港が異次元の入り口であったほうが面白い。

4000年前の縄文時代へ、ドボン

わたしは、俳優の小林綾子さん、フリーアナウンサーの大橋未歩さん、山岳ライターの小林千穂さんと一緒に、縄文の穴に着陸した。

ガイドの菊池文子さんの能代弁は縄文語と解釈すると、スマホで検索しながらこの次元を理解しなければいけない。
あれ、そんなドラマあったなあと思いながら、伊勢堂岱遺跡に向かった。

日本で唯一の4つのストーンサークル(環状列石)にガイドの佐藤さんの案内で歩く。
歩道の横に張り巡らされている針金に「電気牧柵きけん」という看板がかかっている。
慄いていると「気をつげてください」と佐藤さんがニコニコと話した。

伊勢堂岱遺跡ワーキンググループの佐藤さん

環状列石の下は土坑墓。
環状に並べられているのは祭祀に利用されたからとされている。
後から気づいたのだが、ここの地名は秋田県北秋田市脇神字伊勢堂岱。
伊勢信仰が盛んであった江戸中期以降に付けられた地名かなと検索してみたら、昔、伊勢堂という神社があったと北秋田市のホームページ内に見つけた。

縄文時代の祭祀場がここに発見されたのは近年のこと。
何も知らない江戸時代の人たちがここに伊勢神を祀っていたとなれば、よほど特別な気を放つ土地だったのではないかと想像する。

また、ストーンサークルにある不思議は、2日目に行った旧料亭金勇を手がけた匠の精神にも繋がる。でもこれは自分で気づいた方が驚きがあるのでナイショにしておく。

甘辛く煮た鶏肉とあきたこまちの炊き込みご飯をわっぱ飯に。JR東日本主催「駅弁味の陣2015」にて駅弁大将軍に選ばれた

その後、大館駅前【花善】でお昼に鶏めしをいただき、歩いて1分の【秋田犬の里】で秋田犬のハチと撮影タイム。

秋田犬ってなんであんなにブサ可愛いんでしょう。私は留守が多いので犬は飼えないけれど、みんなとお揃いの秋田犬のマスコットで心を満たそう。

建物の前には、忠犬ハチ公像が鎮座。
渋谷駅の忠犬ハチ公の銅像前で撮影する外国人旅行者に、ここに来たら撮影し放題です、と伝えたい。あと、あきたけんではなく、あきたいぬ、と読む。

かわいすぎて、旅の仲間の表情もゆるんで……!

大館の工芸品といえば曲げわっぱ。
お弁当箱に憧れ続けて早ン十年、ずっと欲しかった。でも、仕事柄、それを持っていく場所がないという矛盾。なので、憧れながらも縁がなかったのだが、今回【柴田慶信商店】で曲げわっぱ製作を体験することに。
参加者全員嬉々として手を動かすも、秋田杉を曲げるのは結構難しい。握力がなくなるのは寄る年波には勝てないということか。むむむ。

伝統工芸士の柴田昌正さんが見本を見せてくれた

曲げた物の合わせ目を樺綴じする。道具の姿としてそれらしくなり、仕上がりが見えてきた。
伝統工芸士の柴田昌正さんが市内の山で採取したという貴重な桜の木の皮の綴じ目が素人の作品を「大館の曲げわっぱたらしめん」ものにしてくれたと思う。
最後に三種類のやすりをかけて手触りよく仕上げる。
ここまできたら、早く仕上げてご飯でも入れたい。
大橋さんは早速おやつを入れていたっけ。

夕食は【花てい】で秋田の郷土料理をいただいた。
大好きな山菜、みずが出た。茎に小さな粒がついたみずのこぶっこ(むかご)は口に入れて噛むととろりとして食感がおいしい。
もってのほか(菊の花のおひたし)、こはぜ(山葡萄みたいな果実)のゼリー寄せ、あけび、とんぶり豆腐、栗豆腐など、ここに来ないと食べられないものばかり。


地酒をいただき、山内いものこの入った汁とあきたこまちの新米にしみじみと感じ入った。
特にこのところの米事情、里山事情を考えると感謝で胸いっぱいに(本当に)。

秋田は一年を通して鍋を食べる。そのことを参加者に伝えたら、みんな驚いていた。
皆さんも誰か秋田出身の知り合いがいたら聞いてみてほしい。
夏に鍋をするかどうか、と。

というわけで、旅の3日目から初日に遡った備忘録は終わり。

旅の詳細や仲間たちの表情を思い返す時間も、脳内に刻まれた記憶と感情を探す一つの旅。

晩秋のあきた白神で、かけがえのない時間をタイムトラベルをしたおかげで、もうしばらくお土産と一緒に記憶をたどる旅ができそう。

あきた白神旅にお付き合いいただき、ありがとうございました!
一旦、終わり。

<おまけ>

【柴田慶信商店】そばに、小さな映画館があった。
東北最後の一戸建ての映画館【御成座】には、懐かしい手書きの絵看板がかかっていた。上映作品のラインナップも好みだった。

私は旅先で夜、映画を観るのが好きなのでここではそういうお楽しみもあるなあと。

昨年末には上野から大館まで、往復1300kmの無料送迎を行ったらしい。狂喜の映画館、一度バスに乗り込んでみたい気もする。

また、別次元に連れていかれそうな…….。